魂のファッション
歳をとったらGパンは…
僕が東京都中野区で仕事をしていたころの話です。事務所はJ R中野駅から徒歩25分、バスで数分の場所にありました。
僕はよくバスを利用していました。ある日のことです。
僕がバスに座って発車を待っていると、あるお年寄りの女性が、新たに乗り込んできたお年寄りの男性に向かって「年寄りにはGパンは似合わない」と言ったのです。
ポツリとつぶやいたのではなく、どちらかと言えば叫ぶように言い放ったのです。お年寄りの男性はGパンを履いていました。
かなり大きな声でした。車内はシーンと静まりました。ただGパンを履いたお年寄りの男性には、その声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、わかりません。そしてバスの乗客全員は何事もなかったように、その瞬間を受け流しました。
僕はこの驚くべき出来事に対して、心の中で「あーっ」と思いながら、同時に「もしかしたら、そうかもしれない」と思いました。歳をとったらGパン似合わないのでしょうか。
僕はGパンやGジャンが好きなので時々着ています。確かに歳を取ったら…というのは検討すべき課題かもしれません。一般的にはジーンズは若く、溌剌とした人向けなのでしょう。
僕としては、いくつになっても着たいものは着ればいいし、実は子どものころ、カウボーイに憧れていた時期があり、そんな格好をしたいと思っていたこともあります。このようなことを、僕は「魂のファッション」と呼んでいて、自分の魂が喜ぶものをいくつになっても着続けたいと思います。
ただし、そのために体鍛えるとか、若々しいコーディネートを試みるのは、僕の場合は「無し」かなと思います。ヨボヨボしても「魂のファッション」を楽しむことができたらと思います。
ここにご紹介する動画は、僕が好きな音楽家でありイラストレーターのマイケル・ハーレイです。かっこいいです。
40代からの3つの分かれ道
前回の「老いの恩恵 その2」では、「40代に入ったころから状況は少しずつ変わり始めます。元気だった30代と比較すると体力も身体能力も低下してくるので、無理がきかなくなります」と述べました。
シュタイナーのアントロポゾフィーから誕生したバイオグラフィーワークでも、第7・七年期(42歳から49歳)が始まる42歳を、老いの兆候があらわれる時期であり、霊的な成長が始まる時期だ、とも述べています。そしてこの時期には、私たちの前にいくつかの可能性があらわれます。
老いの兆候があらわれたときの可能性とは次の3つです。
- 体の衰えと足並みを合わせて心も衰える
- 心と体の一体感を維持するために若さを維持する
- 心と体がそれぞれの道を歩むことを受け入れる
簡単にいうと
- 心も老いる
- 若づくりする
- 心の成長に努める
字面的には3の「心の成長」が良さそうですが、僕の場合は、この3つをぐるぐる回っているようです。
新しいことに興味がなくどこにも行きたくないは「1」だし、ローズヒップが体に良いと聞けば飲み始めるのは「2」、「文通ブログ 濱田祥子さんと中安一成さん 2」で述べた、よりマシな人間になる…というのは「3」でしょう。
僕自身はまだ60代後半なので、多少は余力があり、3つをぐるぐる回っていますが、現在よりもさらに年齢が進み、体力も衰えてくると、段々とひとつに絞られてくるかもしれません。
今回のテーマは「老いの恩恵」です。人生の後半に入ると、若さがもたらす体からの衝動や欲望から解放され、社会からも解放される、というふたつの解き放ち(恩恵)が起こります。僕も、この恩恵を活かし、自分自身の心、魂と精神性を高めて、多少マシな人間になって、今生を終了したいと願います
この記事は2023年の中安一成のnotebooks801掲載記事の転載です。
《中安一成》1980年代後半より鍼灸師、植物療法家として自然療法に携わる。静岡市在住。現在はバッチフラワーレメディ、ロッキングテクニック、バイオグラフィーワークの対面式またはオンライン講習を行う。個人サイトnotebooks801を運営。