文通ブログ 濱田祥子さんと中安一成さん 2

natural table 文通ブログ

《差出人》 中安一成  《受取人》 濱田祥子

目次

体に聞いて、魂と語ること

前置き

濱田さん。お手紙をありがとうございます。

僕は2023年の春に、12年間を過ごした藤野から静岡に引っ越しました。藤野、東京、その前の横浜時代を含めればなんと40数年ぶりの静岡です。

静岡は生まれ育った土地なので、やはり「風土」というのでしょうか。その土地のもつ独特の何かが、少々くたびれてきた「僕という人間」を元気にしてくれます。

以前に暮らしていた藤野というところは、神奈川県相模原市緑区にある地域です。以前は藤野町と呼ばれていましたが、相模原市に合併されたことで「藤野」という名称はJ Rの駅名だけになっています。

住まいは藤野でしたが、職場は東京都中野区にありましたので、毎日JR中央線で通勤していました。

その当時、僕は東京都中野区にある自然療法学校マザーズオフィス(アロマテラピーの学校)を運営していました。マザーズオフィスで行っていた様々な自然療法のクラスには、土台となった二つの大きな柱がありました。それは野口整体とシュタイナーのアントロポゾフィー(人智学)です。

この二つの柱がどのように展開して様々なクラスとなっていったのか…これもいつかお話しできればと思います。少々前置きが長くなってしまいました。

いま、ご覧のサイト、natural tableについて

natural tableは、京都の市邊さんから声をかけていただき参加いたしました。市邊さんにはAEAJ時代から親しくさせていただき、そんな市邊さんからのお誘いだったので、ホイホイと参加したというわけです。

僕のことで言えば、基本的には、引きこもり、穴ぐら人間なので、東京での仕事も終わり、まさに引きこもろう、としたときに市邊さんが穴から引っ張り出した、というわけです。実際には、ほとんど穴の中で、時々日に当たっているという状態です。

そして、今回のテーマは、体と魂との対話です。

僕は若い頃から、瞑想に興味を持っていました。でも僕の場合、瞑想の時ほど「妄想」が膨らみました。それも果てしなく膨らむのです。でもこれは仕方がないです。この地上でやりたいことがたくさんありましたし、生活や仕事のことなど、思いがさまざまな方向に広がっていました。

つまりもっと楽しいことをしたい! 遊びたい! 美味しいものをたべたい! あれが欲しい、これが欲しい! です。もし、僕が賢い人間であれば、現世的な楽しみに耽りながらも、どこかで明晰な意識を持つことができたのかもしれません。

残念なことに、僕にはそのようなことは起こりませんでした。妄想は膨らむばかりでした。僕は凡人なのです。ところが、そんな僕にも救いがやってきました。

それは「老い」です。

体が衰えることの恩恵

「60代なんて、まだまだ」と思われるかもしれませんが、実際、僕はくたびれてきました。目がしょぼしょぼしてきましたし、読書の集中力も低下しました。

体力も落ちて、まさに体の衰えを実感するようになりました。ところが、そしてラッキーというのか体の衰えとともに、それまで頭の中にいっぱいあった妄想が少しずつ消えてきたのです。余分な力が抜けた、とでもいうのでしょうか。

やがて、僕のなかに少しずつ静けさが広がり始めました。それまで求めていた静けさがようやくやってきた…という感じです。ありがたいことです。これは僕にとっての「老いの恩恵」です。

このあたりのことは、2022年6月のセラピストクロストーク(「エイジング」)の中で「身体が衰えることの恩恵」という表現で取り上げました。関心のある方は、10分ほどの動画が無料で視聴できますので、ご覧いただけると幸いです。

もうひとつラッキーなことがあります。

それは社会との関わりです。老いることは体だけではありません。老いを感じる年齢になると、仕事もある程度先が見えてきますし、退職、引退という形で社会との距離も徐々に広がってきました。

体が衰えて、社会との距離も広がってくる…。

僕の場合、ようやくというか、ここで自分の魂と向かい合うこと、魂と対話しよう…という気持ちになってきました。これは僕にとっては「老いの恩恵」です。

魂との対話というと、「魂よ、何を求めているの?」というような問いかけもありますが、現実的には、人生の終わりがある程度見えてくると、問いかけはもう少し切羽詰まったものになります。

つまり、「どうしたらもう少しマシになって人生を終えるのか?」です。体が衰えるのは自然の摂理だから良しとしましょう。若さは永遠ではありません。でも、魂は? そしてその奥にある精神性は? です。

できることならば、この一生を終える前に、多少は魂を、精神性をマシなものにして終えたいものです。そのためには老いつつある体をいたわり、魂と語り合い、そして精神性とも向き合うことになります。

そういう意味では、老いは魂との対話の良いきっかけとなります。体の衝動から解放され、社会からも解放されることで、ようやく、魂の声に耳を傾け、よりマシな人間になるための道を歩む…ことができるかもしれません。そのように歩みたいものです。

中安より

文通者プロフィール

中安一成
1980年代後半より鍼灸師、植物療法家として自然療法に携わる。静岡市在住。現在はバッチフラワーレメディ、ロッキングテクニックのクラス、バイオグラフィーワークのワークショップ実習を行う。ネット上でバッチフラワーレメディ、バイオグラフィーワーク、ロッキングテクニックの個人サイトnotebooks801を運営。バッチフラワーレメディ(バッチ財団登録)プラクティショナー、エサレンマッサージプラクティショナー、レイキマスター、鍼灸マッサージ師。

濱田祥子
フランス在住22年。 アロマトローグ。アロマテラピー界の重鎮ピエール・フランコムに師事し、彼の著書『薬用エッセンシャルオイルの科学』(フレグランスジャーナル社)の総合監修を務める。《人、植物、地球のプラスの循環》を目指すサイエンス視点のアロマテラピーの啓蒙活動に尽力中。 「フランス アロマ授業ノート」主宰

スタッフK

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